真宗 大谷派 存明寺

アコヤ貝の涙 (住職の法話)

 

 

 

 

 

 

 

きらりと光る真珠の、そのかがやきの裏側には、アコヤ貝の流す涙がある、という話を聞いたことがあります。

真珠は、アコヤ貝の中に異物が入るところから始まります。天然の場合は砂や泥が入ること、養殖の場合は貝の口をこじ開けて、貝殻を丸くけずった「核」を中に入れることです。このことはアコヤ貝にとっては大変な苦痛なのだそうです。その証拠に、異物が入ったアコヤ貝は、養殖カゴに入れられて穏やかな海の中で育てられるのですが、やがてその半分が死んでしまうのだそうです。

異物を入れられたアコヤ貝はそれを吐き出すことができません。アコヤ貝は涙を流します。やがてその涙の成分が異物である核を何層にも覆い、自分の体の一部にしようと包み込むのだそうです。2年という時を経て、アコヤ貝の中には美しいかがやきを持った真珠が出来上がるということでした。

 

 

私は、この話を聞いて、親鸞聖人の教えの世界に通じるものがあることを強く感じました。

アコヤ貝とは私たちのことです。人生には思いもよらない異物と出会うことがあります。それはたとえば、親しい人との別れ、思いがけない病い、人とのすれ違いや争い、思い通りにならない現実…。そのような時、人は苦しみや悲しみやつらさを感じるものです。それらはまるで無理やり私にねじこまれた異物であるかのようです。それは、吐き出したくても吐き出すことができないこと。涙が流れることだってあります。それが私たちの現実です。

そのような私たちに親鸞聖人からこのような言葉が届けられています。

 かん丹(かんたん)の一粒(いちりゅう)は
 鉄(くろがね)を変じて金(こがね)と成(な)す。
 真理の一言は悪業(あくごう)を転じて善業と成す。
       (親鸞『教行信証』行の巻 199ページ)

現代風にその言葉を訳してみたいと思います。

 仏さまの必ず救うという誓願(=かん丹)は、
 人間が抱く苦しみや悲しみやつらさ(=鉄くろがね)を、
 光りかがやく存在(=金こがね)に変えていく。
 真実の言葉(仏さまの教え)は、
 都合の悪い出来事(悪業)を、
 多くの人々の道しるべ(善業)に変えていく。
       (親鸞聖人の言葉)  

都合の悪い出来事がなくなっていくのではありません。そうではなくて、都合の悪い出来事が、仏さまの教えに照らされれば、多くの人々の道しるべのように光り輝くものへと変化していく、というのです。以上は、住職風の現代語訳でした。

 

 

真珠は、別名「アコヤ貝の涙」といわれているそうです。アコヤ貝には、涙を流し続けた長い歴史があったのでした。その痛みと共に生きて、流した涙の成分によって、美しいかがやきを持つ真珠が出来上がっていったのです。異物がなくなったのではなく、異物がかがやきを持つ真珠に変化していったのでした。

人も、同じです。たとえ涙を流すような現実に出会ったとしても、仏さまの教え(仏さまの誓いや願い)に出会うことがあれば、つらい現実は、だれが見ても美しいと感じる真珠のようなかがやきを放つのでしょう。

あなたの苦しみや痛みはムダではない。そのような親鸞聖人の声が聞こえてくる気がします。

                      (住職・釋諦信)

 

 

 

 

 

※誌上法話『アコヤ貝の涙』は、存明寺寺報『生きる195号』(2020年3月1日発行)から転載・再編集したものです。

 

 

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