子どものつどいの法話
教如上人400回忌 東日本大震災復興支援
日時:2013年(平成25年)4月5日
場所:京都・東本願寺(真宗本廟)御影堂にて
お話:酒井義一(真宗大谷派存明寺住職)
この日、御影堂が子どもたちや若い世代で満堂になりました。
初めてこんな光景を見ましした。
これを特別な風景にしてはならない。
ごく当たり前の光景にするのだ、と強くそう思いました。
お話では、戦国武将の声を入れ、子どもの詩の朗読をし、
本願寺のアイドルたちとの絡み法話に挑戦しました。
第一部 教如(きょうにょ)さまについて
―まもろうとするものがあった―
むか~し、むかし、今から450年前、ここ東本願寺には、まだ今のような大きな建物はありませんでした。広~い野原が続いていました。そこにたたずむひとりのお坊さん、名前を教如さまといいます。教如さまは本願寺の12代目の住職。やがて教如さま、この場所に今のような大きなお寺を建てたんだ。だから教如さまは、ここ東本願寺の生みの親。 実は今年はその人が亡くなってちょうど400年。だから教如さま400回忌の年なんだよ。
教如さまって、一体どんな人だったんだろう。教如さまは、日本を代表する織田信長や豊臣秀吉・徳川家康などの人たちと堂々と渡りあった人なんだ。
織田信長は、あらくれ者。泣く子もだまる、こわ~~~い人。本願寺を自分の言いなりにするため、攻め込もうとしていたんだ。例えばこんな感じ。
(影の声)
鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス。わしは泣く子も黙る織田信長だ。 本願寺を私の部下にし、天下を統一するのだ。 そのために邪魔な本願寺を叩きのめしてやる。皆の者、いくぞ~!!
織田信長と本願寺とのはげし~いたたかいは、10年以上も続きました。でも、教如さまは最後までこの本願寺をまもろうとしたんだ。
時は変わって、天下を取ったのは豊臣秀吉という人。秀吉はアイデアマン。やさしく本願寺に近づいてきた。どんな声かというと、こんな声。
(影の声)
鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス。私の名は豊臣秀吉。 本願寺には、やさしくしているけど、本当は、私が一番えらいのじゃ~~。
この時、いろいろな出来事があって、教如さまは本願寺を追い出されてしまったんだ。 時は変わって、天下を取ったのは徳川家康という人。家康は本願寺に協力的だった。 どんな声の人だったんだろう。これが最後だよ。それは、こんな感じ。
(影の声)
鳴かぬなら 鳴くまでまとう ホトトギス。私の名は徳川家康。 本願寺の教如どのとは、仲よ~~くやろうと、思っとるんだよ~~~ん。
やがて家康はこの場所に広~い土地を寄付したんだ。 そして教如さまはここに今のような大きなお寺を建てたっていうわけ。
教如さまにはいのちをかけてでも、まもろうとするものがあった。 それは何かというと、建物だけじゃなく、「親鸞さまの教え」なんだ。
親鸞さまの教えは、出会いをとても大切にする教え。 人と人との出会い、私のゆく手を照らす言葉との出会い、広~い世界との出会い。 そのような出会いをとても大切にする教え。
教如さまが、いのちをかけてでも、まもろうとしたもの。 そう、それは「親鸞さまの教え」のことなんだ。
第二部 東日本大震災について ― そこに人がいる ―
時は流れて400年。2011年3月11日。この国を大きな地震と大きな津波、そして原発事故が襲いました。 多くの人々がたくさんの悲しい思いをしました。 宮城県の小学校3年生の女の子は、大切な人を一度にたくさん失ってしまった。 その女の子の声を皆さんと一緒に聞いてみたいと思います。
(影の声 女の子)
私は3月11日の大しんさいで、ひいおばあさんをなくし、 お母さん、お母さんのいもうと、おじいさん、おばあさんがあんぴふめいです。
みんながいなくなってから、なんでお母さんたち、 さんかんびやいろいろなぎょうじにこないのと言われることが多いです。
それで、そのことを友だちに言ったほうがいいのか。 言わないほうがいいのかを迷ってしまいます。
でも、お母さんたちは見てます。
なのでわたしも、くじけないでがんばろうと思います。
お母さん。お母さんのいもうとさん。 おじいちゃん、おばあちゃん。ひいおばあさん。
お空から、ちゃんと見ててね。
絶対だよ。
やくそく。
バイバイ。
大切な人をたくさん亡くしてしまった小学3年生の女の子。 その女の子はこう言います。「ちゃんと見ててね。ぜったいだよ。やくそく。バイバイ」 とても心に響く言葉です。
悲しい思いをしながら、今を一生懸命に生きる人がそこにいる。 厳しい現実の中を、それでも懸命に生きようとしている人がそこにいる。 そう、「そこに人がいる」。それが、私たちの決して忘れてはならないこと。 だって、そこに人がいるんだから。
福島県にある原発が事故を起こし、たくさんの放射能をまきちらしてしまいました。 放射能は人間に悪い影響を与えるといいます。 特に子どもたちが心配。 福島県に住む小学校5年生の男の子の声を皆さんと一緒に聞いてみたいと思います。
(影の声 男の子)
外で遊びたい。
きれいな空気がすいたい。
友だちとはなれるのがいやです。
家族が離れて暮らすのもいやです。
とても悲しいです。
なんで原発をこんなにたくさん作ったのですか?
おしえてください。
僕は大人になれますか?
何さいまで生きられますか?
いつになったらほうしゃのうはなくなりますか?
ほうしゃのうをなくしてほしいです。
福島を前のように笑顔いっぱいにしてください。
誰もが笑顔に戻れる日をいつも願っています。
心から願っています。
男の子は言います。
「なんで原発をこんなにたくさん作ったのですか?」
「僕は大人になれますか?」
「何さいまで生きられますか?」
「いつになったら放射能はなくなりますか?」
子どもたちにこんな思いをさせてしまっている。これは事実です。 原発を作ったのは子どもたちではありません。大人たちがそれを作ったのです。 大人たちがそれを必要としたのです。大人たちがそれを認めてきたのです。 だから、すべての大人たちは子どもたちに謝らなければならない。
だから言います。 「ほんとうに、ごめんなさい、子どもたち。」 でも、あやまるだけで終わってはいけない。 私は今、3つのことを大切にしたいと思っています。
ひとつ目は、「そこに人がいる」ということを、忘れないこと。 厳しい現実の中にあっても、懸命に生きようとしている人がいることを、忘れないこと。
ふたつ目は、何が自分にできるのかを自分で考え、自分の責任で動くこと。
みっつ目は、縁ある人々と出会い、人々とつながりながら今を生きていくということ。
繰り返します。
そこに人がいるということを忘れないこと。
何ができるのかを自分で考え自分で動くこと。
そして、人々とつながって生きていくということ。
そのことを大切にしていきたいと思っています。 ほんとうに、大切にしたい。
(本願寺のアイドルたち、本間外陣の右へ登場)
第三部 今日は子どものつどい
― 人は あたたかさを 求めつづける ―
(蓮→蓮ちゃん 赤→あかほんくん 鸞→鸞恩くん 義→酒井義一)
義 さて今日は子どものつどい。 ところで教如さまが、いのちをかけてまでまもろうとした親鸞さまの教えって、一体どういう教えなんだろう。
鸞 ぎいちさん、わしは本願寺の中で教如さまの遺された言葉を見つけたんじゃ。
義 本願寺のアイドルたちの登場です。 鸞恩くん、一体どんな言葉を見つけたんだい?
鸞 持ってまいれ。
(ふたりの忍者、巻物を持って登場)
義 今度は何が出てくるんだろう。おっと、忍者の登場です。 この忍者さんたち、遊ぶースでこのあとみんなを待っている忍者だよ。 どんな言葉なんだろう。楽しみだなあ。
(忍者、「本願寺の家は慈悲をもって本とす」を披露)
赤 本願寺の家は慈悲をもって本とす? ねえ鸞恩くん、それってどういう意味?
鸞 よくぞ聞いてくれた。 それはじゃの~、つまり~、ええ~っと、早い話が、何だっけ。まあ、要するに…、
蓮 この本願寺は、何よりも慈悲を大切にします、ってことじゃないかしら~。
赤 鸞恩くん、本当は知らなかったんでしょ~。 でも~、慈悲って~? う~ん、よくわからないや。ねえぎいちさん、慈悲ってどういうこと?
義 この「本願寺の家は慈悲をもって本とす」という言葉は、教如さまが遺された言葉、 そして私たちへのメッセージなんだ。 ここは何よりも慈悲を大切にしますということ。それがこの場所のいのちなんだ。 慈悲って難しい言葉だけれど、今の言葉で言えば、「あたたかさ」ってことじゃないかな。
赤 「あたたかさ」?
義 そう、「あたたかさ」。 人と人とが出会った時にあたたかさを感じるでしょ。 同じように心のこもった言葉と出会った時に、人はあたたかさを感じる。 広~い世界に出会った時、人はあたたかさを感じるものなんだ。 人はどんなに厳しい寒さの中にあったとしても、 心の奥底では、だれもがみんなあたたかな世界を求めているんだ。 教如さまの時も、そして東日本大震災の今も。
蓮 私にはわかるような気がするなあ、 だって今までも、多くの人たちがあかほんくんの中に書いてある親鸞さまの教えを、大切に読み続けてきたのだから。 「あたたかさ」を求めて。
義 そうだね、そんな歴史を大切にしたいね。
鸞 教如さまがいのちをかけてまでまもろうとしたもの、それは親鸞さまの教え、 そしてそれは、「あたたかさ」っていうことなんじゃな~。
赤 人は皆、誰もが「あたたかさ」を求めて、今を一生懸命に生きている。君もボクも。
(忍者と書 ソデにはける)
蓮 おっと、もうこんな時間。実は今日は東本願寺にとって記念すべき日なのよ。
鸞 ここのお寺が、子どもたちに開放される日だからなんじゃ。
義 そうだね。でも言うまでもないことだけれども、これははじまりの日。 私たちはこれからも大震災のことを忘れずに、人々とつながって生きていく。 そのことを、今日みんなと約束をしたいと思います。
蓮 今日は全国各地からお友だちが集まってくれました。 みんなと、つながって生きていく!そんなことを大切にしたいわ。
赤 ぼくも3つのことを大切にしたいと思います。 そこに人がいるということを忘れないこと。 何ができるのかを自分で考え自分で動くこと。 そして、人々とつながって生きていくということ。大切にしたい。
義 私も大切にします。
蓮 今日がみんなにとって素敵な一日になりますように。
鸞 楽しんでいっておくれ~~。
義 それでは最後に、こちらにおられる親鸞さまに向かって、みんなで手を合わせましょう。
3キャラ、本間外陣隅でご真影に。
酒井、ご真影前にて着座し合掌。 音楽スタート。「恩徳讃」。
終了後、下がっておしまい。
以上「子どものつどい」でのお話でした。
親鸞と出遇うお寺
真宗大谷派 存明寺